Report
2009.12.30 @ STUDIO PARTITTA & BLACK CHAMBER THE STAR FESTIVAL
12月30日、寒風と雨がぱらつくコンディションの中、西日本最大級のダンスミュージックフェスティバル「THE STAR FESTIVAL 2009 FINAL」は開催された。会場となる大阪クリエイティブセンター(OCC)は、関西に残された数少ない中規模イベントが開催できるスポットである。
LiveTechnicalは、メイン会場となるPARTITTAの映像空間演出をVJのVISUALOGICと共に担当した。今回は、グラスバレージャパン(カノープス)が発表したインテリジェント・デジタル・ディスクレコーダー"T2"をシステムの中核に据えた本格的「HD VJing」だった。
T2は、1つのハードウエアから2チャンネルのHD画質の別動画を同時送出できる機材で、HDスイッチャーを使う事でHDでのVJオペレーションが可能になる。LiveTechnicalではおなじみの、PanasonicのAV HS-400をメインスイッチャーに採用し、T2から送出される映像をVJオペレーションした。
プランニングのコンセプトは、220インチのHDスクリーンをステージセンターに配し、ステージ両サイドの壁・天井にSD画質で別映像を投影することにより、映像が照明としての役割を担えるようにすることだった。また、HD系の送出をダウンコンバートして両サイドの照明映像へ入力したり、逆にSD系送出をアップコンバートしてセンタースクリーンへ投影する事も可能にした。このセッティングには理由があり、PioneerのSVM-1000を基軸にしたSD系送出のBPMシンクロ機能を持ったハードウエアを演出から外す事ができなかったことがその理由である。課題は、SDからHDへのアップコンバートする際の画質だったが、IMAGENICSのDC-125A、RS-3500などのコンバーターにより比較的美しい画質でのアップコンバートが可能になった。
20時30分の開場時には、エントランスには長蛇の列がつくられこのイベントへの観衆の注目度の高さが証明された。京阪神地区はもとより中国地方や中京などからの来場も多かったようだ。深い時間になるにつれて、入場者は増え、のべ3000人近い来場者で会場は活気づいていた。
メインステージのスクリーンに映像を投影すると、観客からは歓声があがり携帯電話のカメラやデジカメをステージに向ける人の数は数えきれなかった。まるでライブイベントでペンライトやライターを掲げているようにも見えとても幻想的な風景であった。同時にいままでのVJとは全く次元が違うということを観衆なりに肌で感じているのだと思った。センタースクリーン用のプロジェクターはパナソニックのDZ6710。6000ルーメンのプロジェクターを天井のトラスに天吊りで配置したことで照明がアップした時にもくっきりとした映像を照射することができた。照明と映像による映像舞台演出がステージと観客を1つにしていた。
壁・天井に投影する為に採用したプロジェクターPanasonic PT D-5700は、明るすぎず暗すぎない絶妙なバランスで投影され、観客は音と映像によるショーを見ているようにも見えた。今回のプロジェクターセッティングはすべて天吊りを採用した。タケナカのオリジナル天吊り金具を使う事でトラスに設置する際も驚く程簡単に、しかも短時間で設置することができた。設置・搬入がスムーズに行えるということで、アーティストのリハーサルにも本番と同じ状況で参加する事ができた。
今回のT2国内初導入事例は、成功を納めたと言える。HD動画の出しもスムーズに行え、ストレスなくオペレーションできた。この中規模イベントにおいての本格的なHDによるライブ演出の時代の幕開けを、我々はダイレクトに感じる事ができた。そして同時に演出の中核である機材力と、映像ソフト制作の大切さを感じる事ができた貴重な現場であったと思う。ハードウエアの力と、ソフト制作が本当の意味で連携した時の影響力に我々も大いなる手応えを感じる事ができた。
2010年も、より高水準での映像舞台(空間)演出の実現のためLiveTechnicalは研究、考察、実行していきます。
※SPECIAL THANKS:grassvalley/Toyokazu Yoshioka(TRIANGLE OSAKA)/Eliu*(PHOTOGRAPH)